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株式会社ヤマト(前橋市)

#新設 #ワークスペース #リフレッシュ・食堂 #101坪~ #建設・不動産

「人手不足」をオフィスの力で突破する。オフィス棟「プロダクトセンター」新設の舞台裏 |株式会社ヤマト

「人手不足」をオフィスの力で突破する。オフィス棟「プロダクトセンター」新設の舞台裏 |株式会社ヤマト

 80年以上にわたりインフラを支えるサブコンとして業界を牽引し、設備の企画・設計・施工からメンテナンスまでをワンストップで提供している株式会社ヤマト。同社は2020年、新戦略の拠点として、分散していた5つの部署を集約した「プロダクトセンター」を新設しました。

 今回は、前半でプロジェクトを牽引された株式会社ヤマト 建築設計部長 江原氏に、後半では現場で設計を担う建築設計部 主査 佐々木氏にお話を伺いました。経営層が描く事業戦略と現場のリアルな声をいかに融合させたのかーープロジェクト推進における葛藤から移転後の効果まで、オフィス新設の舞台裏に迫ります。

1.【新設の背景】人手不足への挑戦――「フロントローディング」を実践し、0からものづくりを変える

株式会社ヤマト 建築設計部長 江原氏

ーー 本日はよろしくお願いいたします。まず、御社がこの「プロダクトセンター」を新設した背景について教えていただけますか?

江原氏:よろしくお願いします。背景として最も大きいのは、これからの時代を見据えた「人手不足」への危機感です。弊社ではこの課題に対して、ワンストップサービスで建設プロダクトを推進しているのですが、このプロダクトセンターはその建設プロダクトの付加価値をさらに高めるために作られました。また、中期経営計画でも「工業化」をキーワードとして掲げております。

ーー 「工業化」ですか。建設・設備業界における工業化とは、具体的にどのような取り組みなのですか?

江原氏:具体例を挙げますと、ステンレスの配管の曲げ加工などを行うのですが、通常は現地でジョイント(接合)するものを、私たちの工場であらかじめ加工していき、現地の職人さんの手間を減らそうという取り組みです。人手不足に対して会社としてこれからどう成長していくかという課題に対し、この「工業化」を弊社の工場で加工して納めることで解決し、同時に品質も上げていく。これを最近は重要視して取り組んでいます。

ーー なるほど!現場の負担をあらかじめ工場で減らしておくわけですね。その「工業化」を推進していく上で、プロダクトセンターには具体的にどのような役割があるのでしょうか。

江原氏:工場で作った配管などは狂いのない寸法が必要なんです。そしてその精度を上げるには、これまでは工事現場で職人さんがひとつひとつ現場で施工していったものを、机上で検討する必要があります。

ーー 現場任せにするのではなく、事前に机の上で緻密に突き詰めておく必要がある、と。

江原氏:はい。これまでは工事が始まってから、その場で色々考えていたわけですが、それだとどうしても後手に回ってしまいます。そうではなくて、工事が始まる前の最初の段階で、すべての検討や課題解決を前倒しでやっていこうという考え方があります。これを「フロントローディング」というのですが、この前倒しの仕組みを推進するために、今までバラバラだった設計部隊を統一して、1つの建物に集約しました。5つの部署が1つになることで、事前の検討をスピーディに進めることができます。

ーー なるほど!「フロントローディング」ですね。工事が本格的に始まる前の最初の段階で、すべての課題を机の上で前倒しして解決しておく。そのクオリティを上げるための集約だったのですね。

江原氏:その通りです。そして、この「フロントローディング」を本気で実現しようとすると、5つの部署間でこれまでよりも円滑でスピーディなコミュニケーションを取ることが、絶対に欠かせない要素になってくるんです。ただ、経営層として今回の投資を考えた理由はそれだけではなくて、クリエイティビティの活性化という側面も大きかったです。

ーー クリエイティビティですか。建設会社において、なぜそこまでクリエイティビティが重視されたのでしょう。

江原氏:私たちは0からものづくりをして、お客さまに新しい付加価値を提供していかなければなりません。そのための良いアイデアというのは、ストレスがかかっている状態では生まれにくいんですよね。昭和のような、ただ事務机が整然と並んでいるだけの硬いオフィスでは、クリエイティブな発想とは程遠い。
少しリラックスした良い雰囲気のなかで、みんなでワイワイと会話が弾むことで、「こういう空間って魅力的だよね」「こうやったらうまくいくんじゃない?」というアイデアが生まれてくる。そうしたクリエイティブな発想を促すためにも、ストレスのないリフレッシュスペースや什器が必要だった。それがこの建物を建てたもう一つの大きな目的でもあります。

ーー なるほど!フロントローディングを成功させるための「円滑なコミュニケーション」、そして創造性を引き出す「クリエイティビティ」。この二つを高い次元で活性化させることこそが、プロダクトセンター新設の大きな目的だったわけですね。

江原氏:そうです。これまでは建物同士の行き来といったロス等がかなり生じていたので、時間の無駄の削減や、コミュニケーションの推進。そういった目的でこちらを建設する経緯に至りました。

2.【プロジェクトの進め方】「3つの会議体」で全員を巻き込む

ーー プロジェクトの進め方について伺いたいのですが、具体的にどのような体制で進められたのでしょうか。

江原氏:3つの会議体を作って進めていきました。
1つ目は「定例会議」です。そこでコストやスケジュールなど、大枠の全体的な判断をしていきます。それを月1回開催し、基本的にはこの定例会議で合意形成を図っていきました。
2つ目は「連絡会議」です。これは隔週で開催し、什器をはじめとした細かい部分や、部門ごとの細かいオーダー、例えば「デスクサイズはこういうのがいい」「ロッカーのサイズはこのくらい欲しい」などを決めていく会議です。ここで女性の意見や細かいニュアンスを出していきました。
3つ目は「運営委員会」です。これは、オフィスができた後の運営をどう考えていくか、という会議です。

ーー 「できた後」の運営まで、あらかじめ話し合われたのですね。

江原氏:はい。若手中心に取りまとめて、「ゴミ箱の管理はどうするか」といったルールから、「タオルや掃除用具がどのぐらい必要か」「手洗いの石鹸は自分たちで買いに行くのか」などのものすごく細かい日常の運用ルールを決めていきました。

ーー それぞれの会議体には、何名ほどが参加されていたのですか?

江原氏:定例会議は20名ぐらい、連絡会議は10名ぐらい、運営委員会は6、7名ぐらいだったと思います。普段から設計業務をやっていますので、設計のリーダーとしては「ある程度こういう風にプロジェクトを進めるんだ」という会議体のイメージはありました。他のお客さまの案件をまとめる段階でも、こういう会議体で決めていかないとなかなかコンセンサスが図れないので、最初は「こういうやり方じゃないと決まらないよね」と構想していました。

ーー 普段の設計業務でのマネジメントノウハウが、ここでも活きたわけですね。

江原氏:そうですね。また社員全員を巻き込むために、5部門の部門長に連絡会議に参画してもらいました。というのも若い人たちから意見を募っても、あとから部門長からの修正があるとロスが起きるので、最初から部門長を巻き込むことで意思決定を早めました。

3.【直面した壁】経営層と現場。相反する意見に悪戦苦闘

ーー 経営層が参加する「定例会議」と、現場の声を反映させる「連絡会議」。双方の間で板挟みになるような、葛藤はなかったのでしょうか。

江原氏:実際はかなりありました。例えば経営層では「コミュニケーションを増やすためにワンフロアを見渡せるようにしたい」という思いがあれば現場では、「デスクのところにパーテーションが欲しい」といった意見が挙げられます。

ーー 確かに…。経営陣の「コミュニケーションを活発にしたい」という大義もわかりますが、現場としては「集中したい」という本音もありますよね。

江原氏:そうなんですよね。ただ「ワンフロアで見通しが利くオフィス」というのは経営層からの指示でしたので、誰がどこにいるか分かるようにするために、隔てはほとんど作らないようにしていきました。

ーー 経営層と現場の意見が食い違う中で、江原さんはどうやって最終決定まで導いたのですか?

江原氏:優先度については、基本的には自分の方で取りまとめをして、自分の言葉として経営層に対して発信して決めていってもらうようにしました。大枠のほとんどは、定例会議で決めて、判断がとても難しい事案は会長や社長に直接プレゼンして承認をいただいた経緯はあります。

ーー プロジェクト全体を通じて、「もっとこうすればスムーズに進められたのに」と感じる部分はありますか?

江原氏:もっとプロジェクトの早い段階で、コクヨさんのアンケートやヒアリングをやっておいても良かったな、というのはあります。

ーー 早い段階での「声の吸い上げ」ですね。

江原氏:はい。現場の声をいかに早くヒアリングできるか。ただ単純に「デスクサイズはどのぐらい欲しいですか」と聞くのではなくて、「これからどういう風にやっていきたいですか」という、本質的な質問を投げかける。そのヒアリングの質を上げて早く吸い上げ、早くそれを経営層にも理解してもらうということは、やっておいても良かったなと思います。日常の業務に加えて、上と下の中間に立ってまとめるには、やはりバランス感がかなり問われます。受け身ではなくて、自分からまとめていくという気持ちはかなり必要だなと感じますね。

ーー それこそ、全員を巻き込んで泥臭く進められたのですね。

江原氏:そうですね。アンケートも全員にやってもらいましたし、社長も会長も含めて、本当にメンバー全員が参加したプロジェクトでした。

ーー まさに「全員参画」のビッグプロジェクトですね。

江原氏:ええ。キーマンである部門長とのコミュニケーションを円滑にしていかないと、下の人たちも判断できなかったりするので、事前に部門長たちとはコンセンサスを図って、優先順位を決めて判断していきました。

4.【オフィスのこだわり】ハドルスペース&休憩エリア設計と省エネへの挑戦

ーー オフィスのこだわりを教えてください。

江原氏:コラボレーションエリアとリチャージエリアです。これらは目的であったコミュニケーションとクリエイティビティ活性化のために作りました。この2つのエリアを思い切って広く展開したのですが、特に日常的に使うコラボレーションエリアは、みんなが自分の席に行くために通過するように配置しています。席に向かう間に、他部署がワイワイ打ち合わせている姿が視界に入り、声を掛け合える。コミュニケーションを強制するのではなく、自然と誘発するためのこだわりです。

ーー 動線で自然な触れ合いを生むのですね。

コラボレーションエリア

江原氏:もう一つのリチャージエリアは、単なる休憩スペースというわけではなく、仕事もできるし、ご飯も食べられる、完全にオンとオフを切り替えてリラックスできる多目的スペースにしています。ここでは、コミュニケーションはもちろんクリエイティビティの活性化を期待していました。実は、これまでは休憩スペースがなかったんです。そこでリチャージエリアを設けることで、お昼を食べるのはもちろん、仕事の合間にちょっと場所を変えてアイデアを練ったりとリフレッシュと創作活動を両立できる空間として展開しました。

ーー なるほど! だからこのエリアの名称は、休憩エリアではなく「リチャージエリア」なんですね。単に休むだけでなく、仕事をしながらクリエイティブなエネルギーを充電する場所。

リチャージエリア

江原氏:ちなみにトイレもパーテーションを天井まで上げ、プライベートに配慮してBGMを流すなど、リチャージしながらクリエイティブな発想を生み出せる環境を用意しました。

トイレ

江原氏:そして、もう一つのこだわりはZEBへのチャレンジです。これからのカーボンニュートラル実現に向けた価値提案として必須になってくるということを見据えてチャレンジしました。建設業としての少し大義、というのもありましたね。

ーー ZEB(ゼブ)とは聞き慣れない言葉ですが、どういう意味でしょうか?

江原氏:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称で、先進的な省エネ技術などを使って、建物で消費する年間の一次エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物のことです。この建物は「Nearly ZEB(ニアリ・ゼブ)」を取得していて、年平均にすると一般的なオフィスに比べて90%近くの省エネを達成している建物なんです。

出典:株式会社ヤマト 公式サイト

江原氏:ただ、ここで私が注意したのが、「基本的に快適じゃないとZEBではない」ということなんです。

ーー 快適じゃないとZEBではない、ですか?

江原氏:ただ単純に空調を減らしたり、照明をどんどん減らせば、建物としてはいくらでも省エネになります。しかし手軽に省エネを追求するあまり、そこで働く社員に我慢を強いていては本末転倒ですよね。昔の省エネというと、涼しさや暖かさを我慢するイメージもあったと思うんですけど、基本的に快適なところを前提にしなければいけない。

ーー 「快適さを維持した上での省エネ」を追求されたのですね。具体的にはどんな設備を導入されたのですか?

江原氏:オフィスの中は、天井から床まで温度差がとても少ない温度帯にできる、木村工機さんの「誘引エアビーム」という放射空調を採用しています。また、冬場は加湿ができる機能を空調に設けています。さらに窓には「真空ガラス」を採用して、外皮の熱負荷をかなり抑えています。そのため窓際の熱負荷は、通常の建物と比べると65%近くカットできています。

ーー 65%も! それなら窓際でも快適に仕事ができそうです。

江原氏:全然違いますね。普通は光を入れると窓際が暑くなってしまうので、ブラインドを閉め切るしかないんですけど、真空ガラスなので暑くないんです。だから、暑くならないように配慮した上で、半透過式のブラインドで心地よい光をオフィス内に入れることができます。窓から光を入れることで、「あ、今は昼だな」「夜になったな」という、人間としての動物的な感覚を感じられるところが、昔のオフィスと比べると変化しているのかなと思います。コラボ・リチャージエリアの展開と、快適なZEB環境が組み合わさって初めて、社員がイキイキと働けると考えています。

出典:株式会社ヤマト 公式サイト

5.【新設後の効果】部署を超えて、気軽に意見交換できるようになった

執務室

ーー 実際にこの新センターが稼働してみて、どのような成果が出ていますか?

江原氏:一番は、格段にコミュニケーションが誘発されていますね。やはり部署が一つ屋根の下に集まったのも大きいですが、コラボレーションエリアとリチャージエリアの影響も大きいですね。まず、コラボレーションエリアを必ず通過する動線にしたことで、自分の席に行く間に他のメンバーが会議をしている姿が目に入り、「あの物件の進捗、大丈夫かな?」と間接的に気づけるようになりました。通りすがりに他部署との「さっきみんなで打ち合わせしてたけど、大丈夫?」といった声がけや、若い子同士の交流が生まれています。

コラボレーションエリア

ーー 設計段階でのこだわりが、そのまま狙い通りの「自然な交流」に結びついているわけですね。

江原氏:そうなんです。部門長同士や管理職などが周りの部署も見られますし、忙しい方だと中々オフィスにいなかったりするので、打ち合わせのタイミングも掴みやすくなりました。そしてリチャージエリアのおかげで、部署を超えてざっくばらんに意見交換ができるようになりました。今ではわざわざ別棟の本社から「こっちのメンバーと一緒にご飯を食べたい」と女性社員が移動してくるほど、全社的なコミュニケーション向上の場として活躍しています。社長も年間100社〜200社近く、工場見学などでお客さまをご案内するのですが、必ずリチャージエリアを紹介しています。社員が初めてここを見た時も「おしゃれ!」「東京のオフィスっぽいね」という反応がありました。

6.【予想外の効果】まさかのベテラン層がリチャージエリアを愛用!

ーー 他に、何か予想外の変化などはありましたか?

江原氏:リチャージエリアなんですけど、予想外に年齢層が上の方々が結構使われているな、という印象があります。これはギャップでしたね。

ーー ええ! 若手向けかと思いきや、ベテラン層が使われているのですか?

江原氏:そうなんです(笑)。もっと若い子が自由に使うのかなと思ったら、意外と取締役や社長などの経営陣や各支店長が来た時に、コーヒーマシンのコーヒーを買って、雑談がてら打ち合わせをしていたりします。若い子たちが活用してくれるシーンが多い想定でしたが、想像以上でしたね。

リチャージエリア

あと、これは余談なんですけど、観葉植物を自分たちで育てているんですよ。植栽担当の数人が水やりを回しているんですが、長期休暇の時などは水やりができないので困りました。もし当時に戻って改善するなら、手間を考えて7割くらいはフェイクグリーンにするかもしれないですね、という細かい反省もあります(笑)。

ーー リアルな運用ならではの悩みですね(笑)。それ以外にも、何か予想外の良い変化はありましたか?

江原氏:そうですね、実は「省エネの取り組み」として導入した調光システムが、結果的に残業時間の削減につながるという変化を生みました。お昼の12時と、3時の休憩(10分間)は調光10%で、残業時間帯の18時、20時、22時で三段階のタイマーを組み込んでいて、自動的に調光がかかります。

ーー 時間になると、オフィスが暗くなるんですか?

江原氏:そうです。お昼と3時の休憩の時は一気に10%の明るさまで落ちるので、真っ黒になります。「ON/OFFのメリハリをつけて、しっかりと休んでね」というメッセージですね。さらに夜8時になると50%まで照明が落ちます。照明が暗くなることで「そろそろ帰ろうかな」という意識になるようで、結果的に残業時間の削減につながっています。ズルズルやる無駄がなくなって、すごくメリハリがついたなと思います。

ーー なるほど!光という物理的な環境の変化によって、社員の皆さんの気持ちを自然と切り替えているわけですね。「暗くなったら、もう今日の仕事はおしまい」というルールが、オフィス自体の仕組みとして根付いているのが面白いです。

江原氏:総括すると新オフィスは当初の目的だったコミュニケーションとクリエイティビティの活性化に大きく寄与しています。先ほどお話しした「建設プロダクト」の狙いは、徐々にですが、成果が出現する時期になってきたかなと感じています。

7.【今後の展望】新オフィスで企業の変革と未来の事業モデルを支える

ーー それでは最後に、この新しいプロダクトセンターを活用して、今後どのような会社を目指していきたいか展望をお聞かせください。

江原氏:冒頭でもお伝えした通り、私たちは「建設プロダクト」として、トータルでお客さまによりよい建物を提供していくことを目指しています。そのためには、これからの人手不足を考えた工業化の推進、それを実現するためのフロントローディングが必要不可欠です。そのためにもこの建物を通じて社内のコミュニケーションをより深めていきたいです。このプロダクトセンターを最大限に活用し、より高付加価値な建物をお客さまに提供していきたい、というのが今の会社の目指しているところです。


経営層が描いた「コミュニケーションとクリエイティビティの活性化」という狙いは、実際の現場にどう響いているのでしょうか。ここからは、現場で設計を担う建築設計部 主査 佐々木氏にバトンタッチし、オフィス新設による働き方の変化や、現場ならではの気づきについて話を伺いました。

株式会社ヤマト 建築設計部 主査 佐々木氏

8.【社員の実感】部署の垣根を越えて、気軽に声をかけ合えるようになった

ーー 江原さんから「コミュニケーションやクリエイティビティが活性化された」というお話がありましたが、佐々木さんから見ていかがですか?

佐々木氏:はい。全く同じように感じます。まずコミュニケーションの面では部署によって業務内容が違うので、確認や質問がいっぱいあるんですよね。それが、今の環境になってからは以前より格段にスピードアップしたなと思っています。またプライベートでの会話も結構多くなりましたね。

ーー 以前のような部署が別棟が分かれていた環境では、質問や相談はどのようにされていたのですか?

佐々木氏:メールで確認するか、直接電話をしていました。あとは、同じ本社敷地内にはいるんですけれども建物自体が違っていたので、わざわざ一度外に出て、別棟の建物に行って他部署の人に話しかけるという状態でした。また、部署が違えば雰囲気やルールも結構違って、ちょっと声かけにくいなというのがやっぱりあったんです。でも新しいオフィスになってから、普段から顔を合わせていますので声をかけやすくなったかなと思っています。

ーー 生産性だけでなく、現場の満足度も同時に上がったのですね。それと、新しくできた「リチャージエリア」も、リフレッシュされる人が増えたというお話でしたが、佐々木さんもよく使われるのですか?

佐々木氏:そうですね、基本的にはお昼の時間や、コーヒーを淹れる際などによく利用しています。ただ、リチャージエリアは単に休憩をするためだけの場所ではないんです。私は設計チームに所属しているのですが、業務はパソコンに向かう作業ばかりではなく、ちょっとした打ち合わせをする機会も多いんですよね。一口に打ち合わせといっても、フランクにアイデアを出し合うようなカジュアルなものは、これまでの事務所という空間ではなかなか実現できませんでした。それが休み時間に限らず「場所」として用意され、実際の仕事の中でも活用できるようになったというのは、非常に大きな変化だと感じています。

ーー なるほど。単なる休憩スペースというだけでなく、コンセプトにある「クリエイティビティ」を発揮するためのアイデア出しの場所として、しっかり機能しているのですね。

リチャージエリア

9.【現場ならではの気づき】スペース拡大やおしゃれな什器によってかなり話しやすくなった

ーー佐々木さんが現場だからこそ気づいた部分は何かありますか?

佐々木氏:そうですね。基本的にやっぱりコミュニケーションのところが自分の中では一番大きく変わったかなと思っています。一般的に「事務所」と「オフィス」って、言葉以上に本質的に違うなと感じているんです。今までは「事務所」の中で働いていたなと。事務所の時は、同じ部署の中でも相談やなんでもない雑談がしにくいなという空気がありました。それがこちらのオフィスに移ってきてからは、全体的になんとなく砕けた柔らかい雰囲気で働けるようになっています。

ーー 確かに「事務所」と「オフィス」では受ける印象が大きく違いますね。その違いはどこから生まれるのでしょうか。

佐々木氏:この建物で言えば、物理的な要素も大きいです。今までの従来型の事務所はスペースが限られていたので、話していると周りの声が気になったり、自分の声も響くので少し気遣いがありました。でも今は執務エリアだけでもものすごく広くて、どこかで誰かが話していても全然気にならないです。

ーー 静かでBGMなども流れていないのに、話しやすいというのは不思議ですね。

佐々木氏:そうですね。ある意味、雑音が多いのが、逆に話しやすさにとっては良いのかなと思います。あとは、什器の雰囲気も影響しているかもしれません。私が以前働いていたところは、社内でも比較的新しいデスクではあったんですが、それでも天板がちょっと木目調になっているという程度の話でした。今のオフィスみたいに、いろんなバリエーションがあるようなものではなかったので、什器の雰囲気も話しやすさの理由の1つかなと思います。

執務室

10.【予想外の変化】自席を離れて作業をするだけで、発想の数も、質も、格段に変わった

ーー 実際に新しいオフィスで働き始めて、予想外の変化はありましたか?

佐々木氏:私にとって、事前の計画段階を超えて驚いた変化は3点あります。まず1つ目は、「リチャージエリア」のおかげで、発想力がすごく豊かになったことです。実は私自身、この建物を建てるプレゼンをする推進側だったので、「新しいオフィスにはこういう効果がある」と頭ではわかっていたつもりでした。でも、実際にこっちに移ってきてからのほうが、自分の体感としてはより大きく効果を感じられたんです。

ーー 計画していたご本人が、一番身をもって効果に驚かれたのですね。

佐々木氏:そうなんです。創造性をどう発揮しようかと思った時、自分の席に座ってずっとパソコンに向かっているとか、一生懸命に机に向かって手を動かしているだけだと、やっぱりアイデアは出てこないんですよね。なので、リチャージエリアのような環境があることはもちろんですが、何より「自席以外の場所で作業ができる」という選択肢があること自体が、アイデアを引き出すうえで一役買っているんだと気づかされました。自席を離れて作業をするだけで、発想の数も、質も、格段に変わりましたね。

リチャージエリア

ーー 自席に縛られずに、その時々の仕事内容に合わせて自ら最適な場所を選ぶ。まさにこれって、今注目されているABWそのものですね! では、2つ目の想定外の変化は何でしょうか?

佐々木氏:2つ目は、仕事のプロセスそのものが会話のきっかけになったことです。業務上、建材やサンプルを広げて作業することがあるのですが、それをみんなが見えるオープンなスペースでやっていると、普段仕事でかかわりの少ない他部署の人から「今何やってるんですか?」と興味を持って声をかけてもらえるんですよね。

ーー 確かに、普段は見られない「別の部署の仕事の裏側」が目の前で繰り広げられていると、気になりますね!

佐々木氏:そうなんです。他部署の仕事が目に見えるからこそ、雑談や対話のきっかけになります。ただ業務的な相談がしやすいという次元を超えて、こういう基礎的なコミュニケーションや、色々な幅を持ったコミュニケーションがどんどん取れるようになったのは、こっちに移ってきて気づいた大きな想定外の変化でした。やっている仕事が違っていてもお互いの仕事を知ることができるのは、とても良い雰囲気に繋がっていると感じています。

ーー 素晴らしい変化です。そして、最後の3つ目は何でしょうか?

佐々木氏:はい。自分は観葉植物の世話をしているのですが、手入れが思ったよりも大変だったということです。

執務室入口前の観葉植物

ーー 先ほど江原さんの時にも植栽の大変さについてはお話がありました。担当の方からしたらいかがですか?

佐々木氏:もの凄く大変です。このオフィスには本物の植栽がいっぱいあるんですけど、エリアごとに担当が1名ずつ、全体で5,6名くらい担当がいて、それぞれのエリアを担当している形なんですが、数が多くて水やりは大仕事なんですよね。分担すればいいという話もあるんですけど、エリア内でも色々な種類の植物があってそれぞれ個性が違うので、水の量や水やりの間隔を他人に共有して展開するのが難しくて、自分のエリアはなかなか分担できずにいます。

ーー 種類の違う本物の緑を維持管理するのは、並大抵の労力ではないのですね。

佐々木氏:そうなんです。実際問題、管理しきれなくて枯れてしまっている植物がちらほらあります。これはどうなのかなと思っていますし、枯れていくのを見るのはつらいものです。自分たちがリアルな植物の価値を謳って導入したものの、実際に現場がそこまでの管理の労力に見合った価値を出せているかというと、正直に言って難しい部分があります。ただリアルの良さがあることも確かなので、管理面を踏まえて上手くフェイクを混ぜながら計画するべきかなと思っています。

ーー リアルな植物の管理の負担のお話は、これからオフィスにグリーンを取り入れようとしている読者にとって非常に貴重なリアルですね。

11.【今後の展望】自分たちが新オフィスの効果を120%活かしていく

ーー 今回のオフィス構築には、コストも時間もかなりかかったのではないかと思います。生産性も上がったとのことですが、コストパフォーマンスについて現場としてはどう思われますか?

佐々木氏:そうですね。直接的な「数字」にはなかなか今はまだ現れていないかなと思います。ただ、個々人のモチベーションや、気持ちの変化みたいなところで言えば、「これ、やる必要なかったね、損だったね」というのは絶対にないと言い切れます。やってよかったっていう人のほうが圧倒的に多いと思います。

ーー モチベーションや意欲という目に見えない価値に対して、非常に大きく寄与したということですね。

佐々木氏:はい。それに、生産性というところで言うと、これまでは新しい環境に対して、みんなが「どうやって働くか」を模索している期間だったと思うんです。それがこれからは、慣れた環境を使ってどう生産性に結びつけていくかという、それぞれのこれからの挑戦になってくると思っています。

ーー では最後に、今後佐々木さんがこのプロダクトセンターでどのように働いていきたいか、展望をお聞かせください。

佐々木氏:オフィスが新しくなり環境が変わったことで、自分自身のモチベーションは大きく上がりました。ベースアップしたこのモチベーションを持って、今度は自分たちがこのオフィスの効果を120パーセントどう生かしていけるか。その挑戦がまず1つです。
もう1つは、このオフィス自体が建ててから実はもう5、6年が経っているんです。できた当時は新しかったのですが、そこから内容が全然変わっていなくて、1つの「マンネリ化」が起きているなと感じています。世の中の働き方はこの5、6年の間でものすごいスピードで変わっていますから、そこから学ばないといけないと思っています。一回建てて終わりではなく、今度は中のソフトの部分をどうやって変えていくか。その運用の挑戦をしていきたいです。これはお客様にオフィスを提案するうえでも、非常に重要な実践だと思っています。

ーー ハードを作るだけでなく、中のソフトを時代に合わせて変え続ける姿を見せる。とても大切ですね。現場の方々がどのように感じていらっしゃるかがよく分かりました。ありがとうございました!