「会社ってなんだか息苦しいじゃないですか」
そう語るのは、群馬県前橋市に拠点を置くIT企業・サンダーバード株式会社 代表取締役 山根氏です。同社は受託システム開発やWebサイト制作を手掛けると同時に、発達障害児向けのプログラミング教室や福祉IT支援など、「IT×福祉」の領域で独自の事業を展開しています。
移転した同社オフィスに足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのはネットが張られた「卓球台」と、それを取り囲むゆったりとした「ゲーミングチェア」です。一見するとオフィスとは思えない、どこか遊び心と解放感にあふれた空間が広がっています。
今回は、前半でサンダーバード株式会社 代表取締役 山根氏に「自宅よりも居心地がいい場所」を追求したオフィス移転の舞台裏とユニークな経営哲学を、後半では同社のシステムエンジニア 古澤氏に現場視点での働き方の変化やリアルな気づきを伺いました。
- 【移転の背景】二人座ればいっぱいだったオフィス。求職者を不安にさせたくなかった
- 【プロジェクトの進め方】信頼できる地元のパートナーと駆け抜けた、2ヶ月のスピード移転
- 【直面した壁】初めてのオフィス移転。完成イメージが湧かなかった。
- 【オフィスのこだわり】「自宅よりも居心地がいい場所」の追求
- 【移転後の効果】色々な社員が実力を100%発揮できる環境へ
- 【今後の展望】フルリモートに固執せず、変化する時代に合わせて進化していくオフィスのあり方
- 【社員の実感】社内コミュニケーションが格段に取りやすくなった
- 【現場ならではの気づき】開発テストがはかどり、作業効率が劇的に向上した!
- 【予想外の変化】思ったより卓球台で卓球をしなかった(笑)
- 【今後の展望】テレワークとリアルの良さを引き出し、みんなで楽しく働いていく
1.【移転の背景】二人座ればいっぱいだったオフィス。求職者を不安にさせたくなかった

ーーよろしくお願いします。まず、今回のオフィス移転の背景を教えてください。
山根氏:よろしくお願いします。前の事務所は4畳ぐらいの狭い事務所だったんですね。今と同じくらい開発機材があったので、本当に2人座れば、もういっぱいで。打ち合わせをする場合は、違う場所でやるか、わざわざ打ち合わせスペースを借りてそこで作業していましたね。最初に入った段階では足りていたのですが、人数や機材も増えぎゅうぎゅうでした。当時の事務所は駅近で安いことが魅力でおしゃれさなどは全然考えていなくて、結局1年で出ました。

ーー物理的な狭さ以外にも、何か困っていたことはありましたか?
山根氏:荷物の崩落リスクだとか、全員が集まりにくくて一体感を出しづらいといった細かい悩みもありました。ですが、一番困っていたのは採用面談です。面談の時に会社の住所じゃない別の場所に来てもらっていたので求職者の方の不安になりますし、すごく気になっていた部分でした。それで広い場所を探しているときに、たまたまここを見つけて入居したという形ですね。築年数はあるんですけど、リフォームされているので非常に綺麗でした。ネックだったのは家賃ですね。3〜4倍になるので、本当にオフィスのためだけにこれだけの金額を出せるのかというのは当時1番気にしていたことですが、最終的には投資だと割り切りました。
2.【プロジェクトの進め方】信頼できる地元のパートナーと駆け抜けた、2ヶ月のスピード移転
ーーこの移転プロジェクトの進め方について教えてください。
山根氏:今回のオフィス移転は、物件が決まってから実際に完了するまで約2ヶ月という、スピード感で進みました。社内の担当としては、基本的に私1人で取り仕切っていた形です。移転にあたって特に重視したのが、「パートナーとなる企業選び」でした。ネットで「オフィス移転」と検索すると、大手企業さんがたくさん出てきます。もちろんそうした大手さんの安心感も魅力的ですが、私の中には「地域に根ざした地元の企業さんと一緒にやりたい」という強い想いが最初からありました。何かトラブルがあったときのフットワークの軽さや、地元の特性を理解したうえでの提案力があると考えたからです。そんな中で探していたところ、アサヒ商会さんの法人向けオフィス提案サイトに辿り着き、「ここだ」と思ってすぐに問い合わせを出しました。
3.【直面した壁】初めてのオフィス移転。完成イメージが湧かなかった。
ーー初めてオフィス移転を進める中で、直面した1番の壁や懸念点は何かありましたか。
山根氏:初めてのことなので、イメージが湧かないのが一番の課題でした。もちろん、業者さんにパースやデザインイメージは見せていただくんですけど、「本当にこれで進めていいのか」みたいな不安というか、迷いというか、そういうのはありましたね。
ーーその不安やつまずきは、どのように乗り越えたのですか?
山根氏:本当に「もうやるしかないな」みたいな感じでしたね(笑)。あとはやはり業者のデザイナーさんを信用しました。いざ進めていただく中では、特段不安とか困ったことはなかったですね。電源もうまく取り回してもらいましたし、配置いただいた後は、本当に最初のデザインイメージ通りっていう形になったので。不安とか困ったことはなかったと思います。十分に満足しています。
4.【オフィスのこだわり】「自宅よりも居心地がいい場所」の追求

ーー今回のオフィスづくりで、一番こだわったポイントを教えてください。
山根氏:「オフィスらしくないオフィス」というところですね。会社ってなんだか息苦しいじゃないですか(笑)。会社に来て息苦しい空間にいると、どんどん来たくない気持ちは強くなっていくと思うので、「自宅よりも居心地のいいオフィス」にしたかったんですよ。「会社に行った方がリラックスできるな」という状態が理想でした。
ーー「自宅よりも居心地がいいオフィス」というのは非常に面白いテーマですね。なぜそのような考えに至ったのでしょうか。
山根氏:弊社が創業時からフルリモートだからだと思うんですよね。うちは、ずっとテレワークでやっていて、自宅作業がメインなんです。その中で、どうしたら会社に来てもらえるかっていうのを考えたときに、グレーのデスクが並んでるよりは、遊び心がある場所のほうがいいと思いました。居心地がよくて、自宅に近い雰囲気みたいなのが欲しかった。そういうのでカジュアルというところにたどり着いたのかもしれないですね。

ーー作業場の卓球台やゲーミングチェアが目を引きますが、あえてこれらを選ばれたのはなぜですか?

山根氏:せっかくオフィスを作るなら、リアルなネットが張られた卓球台がど真ん中にある方が面白いなと思ってデスク代わりに導入しました。ゲーミングチェアを選んだのは単純に好きだからというのもありますが、実は私、普通の椅子にじっと座っていられないタイプなんです(笑)。椅子の上であぐらをかいたりして、自由な姿勢でリラックスして作業したい人間なので、この椅子が一番しっくりきます。気分転換に、時々ヨギボーに移動して作業することもありますよ。

ーーこうしたカジュアルでユニークなオフィスづくりは、やはり山根氏ご自身の「こんな職場で働きたかった」という理想がベースにあるのでしょうか?
山根氏:そうですね。自分が12年間サラリーマンをしていた頃に「やってほしかったこと」を取り入れ、「嫌だったこと」を徹底的に排除した結果です。その考えは内装だけでなく、制度面にも反映されています。以前の職場はスーツ出社が当然でしたが、うちの環境には合わないので基本はスーツ不要にしました。徹底的な効率重視という軸は一貫して貫いています。
例えば、オフィスに代表電話を置くのもやめました。プログラミングに集中しているときに電話が鳴り、「誰が出るんだろう…」とお互い様子を見るあの瞬間って、本当に無駄ですよね(笑)。現場の集中を切らすくらいなら無くしてしまおうと連絡はすべて自分に直接届く仕組みにしています。
5.【移転後の効果】色々な社員が実力を100%発揮できる環境へ
ーー実際に新しいオフィスが稼働してみて、前のオフィスと比べて社内の空気や、自社開発のやりやすさにどんな影響がありましたか。
山根氏:作業効率が格段に向上しましたね。移転前はそもそも機材を広げる場所もなかったんですよね。先ほどお伝えしたように、うちは色んなものを作っているので、壁に何か投影しなきゃいけない時に前の事務所ではできなかったんですよ。そういった自社開発がしやすくなったのは、当時で1番良かったところですね。
ーーあちらの個室ブースも、開発に集中してもらうために設置されたのでしょうか?

山根氏:実はあのブース、聴覚障害のある社員のために用意したものなんですよ。彼は、周囲のキーボードを叩く音や、他のメンバーの話し声などの「音」が響く環境だと、補聴器を通して色々な雑音を拾ってしまって、どうしても頭が疲れてプログラミングに集中しづらいという課題がありました。それなら、周りの視線や音を完全にシャットアウトして、一人の世界に深く没頭できる静かな部屋を作りたいと考え、あの個室ブースを用意したんです。障害や特性、バックグラウンドがどうであれ、彼らが実力を100%発揮して、良い成果物を作ってくれれば会社としては大歓迎なわけです。そのための環境を整えるのは、経営者としての私の当たり前の役目だと思っています。
ーー徹底して社員ファーストなのですね。もう1つの課題だった「採用面」についてですが、移転前と比べて社員数や採用状況はどのように変わられたのですか?
山根氏:移転前は全社員で4名ぐらいで、今は8名います。去年2名採用して、1人は新卒。今年にまた転職者が1人入るので、一応計画通りには採用できてるかなっていうところですね。 オフィス移転を通じて我々が採用を積極的にできるようになったのは間違いありません。当時は違う場所を借りて、会社の住所じゃない場所に来てもらっていたので求職者の方の不安になっていたと思います。しかし今は広いテーブルがあるのでそこで面談して、ビルもオフィスも綺麗だし、プラスに映っていると思います。そして自分の会社をPRする自信にも繋がっていると思います。また、スペースに区切っていないので、硬すぎない会社の雰囲気が空間から伝わると思います。
6.【今後の展望】フルリモートに固執せず、変化する時代に合わせて進化していくオフィスのあり方

ーーでは最後の質問になるんですけども、今後新しいオフィスを活かして、どのような会社を作っていきたいですか。
山根氏:そうですね、時流で言うと、フルリモートとかテレワークっていうのは減少傾向にあって、コロナ明けても出社に切り替える会社さんも増えましたし、今もやっぱり増えてます。またAIが出てきたことで、対面重視の流れが業界全体としてあるので、うちも徐々にその考えを取り入れていかないといけないかなというのがあります。 今回借りたオフィスは十分な広さがあるので、この環境を活かして採用も積極的に進める予定です。まずは1〜2年で5名ほど増員し、将来的には10〜15人のメンバーが活発に意見を交わしながら共に成長できる、活気ある組織にしていきたいです。
山根氏が踏み切った今回のオフィス移転。実際の現場には、どのような影響が出ているのでしょうか。 ここからは、システムエンジニア 古澤氏にバトンタッチし、オフィス移転による働き方の変化や、現場だからこそ見えてきたリアルな気づきについて伺います。
7.【社員の実感】社内コミュニケーションが格段に取りやすくなった

ーー本日はよろしくお願いいたします。先ほど山根様から、新しいオフィスの効果として「見栄えが良くなった」「スペースが広がり作業効率が高まった」といったお話を伺いました。現場を支える古澤さんから見て、新しいオフィスの効果はいかがでしょうか?
古澤氏:よろしくお願いいたします。まず、オフィス自体の見栄えがかなり良くなったこと、そして社員が来ても全員がのびのび座れる広さがあることはとてもモチベーションが高まりますね。 前の事務所は私と代表、あともう1人が来たらそれだけで部屋の中がパンパンで、限界の狭さでした(笑)。そこから、全員が余裕を持って入れる環境になったのが大きな変化です。なにより、テーブルの幅や広さがグッと広がったおかげで、対面で目を見ながら会話ができるようになりました。以前の空間のように、お互いの配置や横を向きながら話す窮屈さを気にする必要がなくなったので、社内コミュニケーションは格段にやりやすくなったと感じています。
ーーお客様をオフィスにお迎えしたときの反応や、ご自身の気持ちの面でも変化はありましたか?
古澤氏:はい、やはりそれも凄くありますね。以前のオフィスは狭すぎてお客様をお呼びできなかったので、打ち合わせは外のカフェやお店を使わざるを得なかったんです。でも、カフェだとどうしても周りの他人の目が気になって、大切なビジネスの話がしづらいという難しさがありました。お相手から「何の会社なんだろう?」と思われてしまっているような引け目も、どこかにあって……。 でも今のオフィスになってからは、堂々と打ち合わせができるようになりました。これは仕事を進める上での大きな自信に繋がっています。またお客様からも直接「素敵なオフィスですね!」と褒めていただけることがあり、第三者の方からそうやって言っていただく言葉は、やはりモチベーションになりますし、この会社で働く誇りにも繋がっているなと実感しています。

8.【現場ならではの気づき】開発テストがはかどり、作業効率が劇的に向上した!
ーー開発を担うエンジニアならではの「新しいオフィスになってからの気づきやメリット」はありますか?
古澤氏:開発環境で言うと、壁側に広いフリーな空間をとってる点ですね。これは凄く大きいです。 うちのシステム開発では、全身を検知するセンサーを使って、プロジェクターを壁に投影して行うイベント用の開発やテストケースが非常に多いんです。前のオフィスはとにかく狭かったので、プロジェクターの映像をまともに投影できる広さの壁や空間自体がそもそもありませんでした。体を動かしてセンサーをテストするにも、狭いところで窮屈に動くしかなくて(笑)。 しかし今の新オフィスでは、広い壁に対して直接映像を大きく映し出し、検証用のプロジェクターを使ってしっかりテストを走らせることができるようになりました。思いっきり体を動かして、実際に大きく投影して試せるようになったのは、開発している側としては劇的に作業効率が上がりましたね。

ーーオフィスのカジュアルな雰囲気や「スーツ禁止」といったルールについて、出社のハードルはいかがですか?
古澤氏:出社のハードルは、私を含めてものすごく低いと思いますね。なんて言うか、変な堅苦しさが一切なく、本当にフランクに、ラフに来られるんです。 他の会社さんだったら、朝の混んでる通勤時間帯にスーツを着て、ピシッとして行かなきゃいけない……みたいなことがあるじゃないですか。でもここは、この空間デザインや雰囲気がそもそもカジュアルなので、逆にスーツを着てくると浮いてしまうんですよ(笑)。代表の「スーツなんて着てくる必要はないよ」というフランクな空気が最初からあるので、すごくリラックスして出社できます。
9.【予想外の変化】思ったより卓球台で卓球をしなかった(笑)
ーーオフィス移転の前後で、「これは予想外だったな」という変化や気付きはありましたか?
古澤氏:そうですね。一番の想定外は、オフィスの主役として置いた卓球台が、「大きな仕事机」として想像以上に広くて使いやすかったことですね。これだけ大きいので、奥側に大きな開発モニターをドンと置いたりしていますさらに、卓球台でありながら真ん中にコードを通せる穴が綺麗に空けられていたり、配線がすぐ取りやすい位置にコンセントが用意されていたりするので、PC作業は快適です。最初は「遊び心」重視で置いた部分もありましたが、今や業務を支える上で欠かせない仕事用デスクとして機能しています。
ーーなるほど、遊び心で入れた卓球台が実用的なデスクとしてフィットしたのですね。
古澤氏:はい。ただ、もう一つの想定外を強いて言うなら、「思ったより卓球台で卓球をしていない」ということですかね(笑)。
ーー(笑)。最初は結構みんなでやる予定だったのですか?
古澤氏:作った当時は「ちょっとみんなで遊べるかな?」なんて思っていましたし、今でもネットを張ればいつでもできるんですけどね。でもやっぱり、いざ始めてみると使うことはあんまりないですね(笑)。山根代表が以前、娘さんが遊びに来たときに一度だけ一緒にやったと言っていましたが、メンバー同士で白熱する、みたいなことは今のところありません(笑)。
10.【今後の展望】テレワークとリアルの良さを引き出し、みんなで楽しく働いていく

ーーこの素晴らしいオフィスを活かして、古澤さんは今後どのように働いていきたいですか?
古澤氏:弊社は基本的にテレワークが中心の会社なので、普段の業務連絡ややり取りのほとんどはチャットツール上で行われています。 でも、月2回の出社日や、みんなで直接集まるべきタイミングなど、「来る時はオフィスに来る」というリアルの場ができました。だからこそ、この新オフィスをコミュニケーション拠点として上手く活かしながら、「テレワークの良さ」と「リアルの良さ」、その両方をどちらも大事にバランスよく引き出して、みんなで楽しく働いていければなと考えています。