トヨタ車の販売やアフターサービスを通じ、地域のカーライフを支え続けてきた群馬トヨペット株式会社。築50年が経過した同社の旧オフィスは、「とにかく古くて暗い」という課題を抱えていました。
そんな昔ながらのオフィスがリニューアルを経て激変。明るく解放感あふれる空間には、フリーアドレスによって部署を超えた会話が自然と飛び交う光景が広がっています。
なぜ老舗オフィスは大改革を遂げられたのか? 前半ではプロジェクトを率いた群馬トヨペット株式会社 常務取締役 山崎氏に、後半では現場社員である人財開発Gリーダーの岩﨑氏に取材を敢行。改装のこだわりから、社内にもたらされたリアルな変化まで、プロジェクトの全貌に迫ります。
- 【改装の背景】「とにかく古くて暗かった。」50年続いたオフィスをリニューアル
- 【プロジェクトの進め方】オフィス見学を通じてフリーアドレスへの移行を決意
- 【直面した壁】現場からのペーパーレス化への抵抗
- 【オフィスのこだわり】社内便をスマートに収納する「共有キャビネット」とスタンディングの打ち合わせスペース
- 【改装後の効果】「本当にやってよかった」フリーアドレスによって働き方やコミュニケーションが一新!
- 【今後の展望】風通しのいい会社を作っていき、社員満足度を向上させる
- 【社員の実感】クリアデスクにより思考のOSをリセットできる環境へ
- 【現場ならではの気づき】雑談が増えて関係性が深まった
- 【予想外の変化】フリーアドレスで省スペースに!来客スペースの新設
- 【今後の働き方】オープンな雰囲気の中で「自由闊達」な社風を加速させていく
1.【改装の背景】「とにかく古くて暗かった。」50年続いたオフィスをリニューアル

ーー本日はよろしくお願いします。まず、オフィス改装の背景を教えてください。
山崎氏: よろしくお願いします。当時は建物自体が築50年以上経過しており、とにかく古くて暗かったです。おまけに誰も使っていない机があったり、歩行スペースが確保できていなかったりと働きにくいと感じることが多々ありました。そこで、当時使っていた什器類を新しく入れ替えようという話が持ち上がったのが最初のきっかけです。
ーー以前は今とかなり雰囲気が違ったのですね。

2.【プロジェクトの進め方】オフィス見学を通じてフリーアドレスへの移行を決意
ーーそこからはどのようにプロジェクトを進めていかれたのですか?
山崎氏: 私が音頭を取り、総務のメンバー4、5人と一緒に進めていきました。本プロジェクトの目的として、以下の3つを掲げました。
- 1.フロアリニューアルによるスタッフのモチベーション向上
- 2.スタッフ間のコミュニケーション活性化と業務効率の向上
- 3.ペーパーレス化と4S(整理・整頓・清掃・清潔)の推進
山崎氏:そこでアサヒ商会さんに相談したところ、コクヨさんのオフィス見学を提案していただき、総務メンバーで視察に行きました。コクヨさんのオフィスはフリーアドレスを採用しており、当時のトレンドだったこともあって「うちもこんな感じがいいよね!」と意気投合し、フリーアドレス化を前提に進めることにしました。
それに伴い、フロア内のどこでも仕事ができるよう無線LANを導入し、配線を床下に収めるためのOAフロア化にも取り組みました。
ーーフリーアドレスへの移行に対して、現場からの戸惑いはありませんでしたか?
山崎氏: やはりありましたね。フリーアドレスといっても、業務特性上どうしても馴染まない部署があります。「金庫が背後にないと仕事がしづらい」という経理や、「書類を大量に扱うため専用の袖机が必要」という金融チームなどから様々な意見が出ました。
そこで全社員にアンケートを実施し、フリーアドレスを希望する人と固定席が必須な人のそれぞれの要望をヒアリングしたんです。その結果、全体の3分の2をフリーアドレス、3分の1を固定席とするレイアウトに決定しました。
3.【直面した壁】現場からのペーパーレス化への抵抗
ーー新しいオフィスへの移行にあたって、直面した壁や苦労された点はありましたか?
山崎氏: 一番の壁は、プロジェクトの目的でもあった「ペーパーレス化と4S」の推進です。各部署に「まずは書類を半分捨ててほしい」と指示を出したのですが、案の定「さすがにそこまで減らすのは難しい」と困惑の声が上がりました。 ただ、いざ整理を始めてもらうと、案外捨てても困らないんですよね。今でもキャビネットが満杯になることはありませんし、いかに無駄な書類を溜め込んでいたかを痛感しました。
ーー「とりあえず保管しておく」という書類がかなり多かったのですね。現場からは他にどのような戸惑いの声がありましたか?
山崎氏: フリーアドレス化に伴う「書類の管理方法」に対する不安の声も大きかったです。「手元に書類がない状態で、本当に仕事になるのだろうか 」と。 そこで、アサヒ商会さんからご提案いただいた持ち運び用の専用バッグを導入しました。個人のロッカーからその日必要な書類だけをバッグに入れて席へ運び、終わったらロッカーに戻すという運用に変えました。新しいスタイルを試してもらううちに不便さも解消され、今ではすっかりこの持ち運び文化が定着しました。

4.【オフィスのこだわり】社内便をスマートに収納する「共有キャビネット」とスタンディングの打ち合わせスペース
ーー今回の改装で、特にこだわったポイントやエリアを教えてください。
山崎氏: 大きく2つあります。1つ目は、オフィスの中央に設けたキャビネットです。我々は県内に25店舗ほどあり、毎日「社内便」として書類のやり取りをする必要があります。以前は各部署の机に社内便が山積みになっていて、それを処理するまで自分の仕事が手につかないこともありました。中央に集約する場所を作ったことで、デスク周りがすっきりしました。

山崎氏: また隣にもう1台キャビネットを並べて、「共有文具コーナー」にしています。 ハサミやホッチキスなどの文房具類も、以前は一人ひとつずつ机に持っていましたが、中央の共有文具スペースに集約したんです。これによって紛失や人に借りる手間がなくなり、無駄なコストの削減にも繋がっています。

ーー二つのキャビネットで共有物を管理しているのですね。もうひとつのこだわりポイントは何でしょうか?
山崎氏: スタンディングの打ち合わせスペースです。以前は大きな会議室しかなく、2、3人でちょっとした打ち合わせをする場所がなかったんです。そこで、立ちながら打ち合わせができるスペースを2つ作りました。モニターを設置し机から音が出る仕組みにしたので、オンラインミーティングでの使用頻度も高いですね。

5.【改装後の効果】「本当にやってよかった」フリーアドレスによって働き方やコミュニケーションが一新!

ーー実際に移転してみて、どのような効果がありましたか?
山崎氏: まず、オフィスが格段に綺麗になりました。什器が新しくなった恩恵もありますが、フリーアドレス化により退社時には机の上を片付けて何もない状態にするルールになったことが大きいです。山積みだった紙が減り、個人情報の漏洩リスクも低下したと思います。
また、フロア全体のスペースが広がったことや、机の上に余分なものがなくなったことから、とても仕事がしやすくなりました。取引先様にも「オフィスを見させてください」と言われたことも結構ありました。
ーーかなり見栄えや働き方が改善されたのですね。社員様同士の関わり方に変化はありましたか?
山崎氏: これが一番大きな変化ですが、部署を超えたコミュニケーションが活性化しました。 固定席だった頃は、どうしても「同じ部署の決まったメンバー」としか話さない状態が当たり前になっていました。それが今では、朝来た順番に好きな席へ座るので、日替わりで隣のメンバーが変わります。
ふとしたきっかけでプライベートな話や業務のちょっとした相談になることが多いです。心理的な壁がなくなったことで社内の一体感が生まれ、結果として仕事の連携もスムーズになったと感じています。
ーーフリーアドレスを導入した企業にありがちな「結局同じ席に座ってしまう(固定席化)」といったことはありませんでしたか?
山崎氏: 一部では見られますが、多くの人は流動的に動いています。理由は2つあると考えています。
1つ目は、導入時に「席の自由化によるコミュニケーションの活性化」という目的を社内に明確に打ち出したため、社員が意識的に席を変えてくれていること。
2つ目は、我々役員自身もフリーアドレスの中に入り、意識的に席を変えながら仕事をしていることです。トップが実践することで、会社全体にそうした文化が根付きました。部署や役職の垣根もなくなったので、本当にやってよかったですね。
ーー当初掲げられていた3つの目的は達成されていそうですね!ちなみに改装前後で予想していなかった出来事とかはありますか?
山崎氏:固定電話から子機への移行に慣れるのが想像以上に大変でした。これまでは各自の机に1台ずつ固定電話がありました。それを内線用の持ち運び可能な子機に変更したのですが、慣れるまで本当に不満が多くて。
ーー電話機の変更がそこまでのハードルになるとは意外ですね。
山崎氏: 50年間ずっと固定電話でやってきましたからね。また着信があってもバイブレーションだと気づかない。建物内のどこからでも内線が取れるようになったはずなのに、「全然電話に出ない!」なんてことも(笑)。新しい環境に慣れるまでは、これが一番時間がかかったかもしれません。
ーー「もっとここを変えればよかった」と感じる部分はありますか?
山崎氏: 今回はスペースの都合で難しかったのですが、ドリンクを飲みながら雑談できるカフェのような、もっとフランクに社員が集まれるスペースがあればさらに良かったですね。新しいオフィスを作る機会があれば、次はぜひそういった場所も検討したいです。
6.【今後の展望】風通しのいい会社を作っていき、社員満足度を向上させる

ーー最後に、新しいオフィスを活かして、今後どのような会社にしていきたいか教えてください。
山崎氏: やはり一番は「社員満足度を向上させる」ということです。そのためには、コミュニケーションの活性化が欠かせません。毎日違う人が隣にいるフリーアドレスの環境は、すごく重要だと思っています。役職に関係なく、我々役員が新入社員の隣に座ることも普通にありますからね。
部署や役職を超えたコミュニケーションを通じて、風通しの良い会社を作っていきたいです。かしこまった会議の場ではなく、何気ない雑談の中で「会社としてはこういう方針なんだよね」と、隣にいるからこそ自然に伝えられる。会社の方針を浸透させるという意味でも、この環境は非常に有効だと感じています。
50年続いた習慣からの脱却を果たした今回のオフィス改装。実際の現場には、どのような変化や影響が出ているのでしょうか。ここからは、人財開発Gリーダー 岩﨑氏にバトンタッチし、オフィスリニューアル後の働き方の変化や、現場ならではのリアルな声をお聞きします。
7.【社員の実感】クリアデスクにより思考のOSをリセットできる環境へ

ーー 山崎さんは今回の改装で「コミュニケーションの活性化とペーパーレス化」を成果として挙げられていました。現場の岩﨑さんからご覧になって、まずコミュニケーション面はいかがですか?
岩﨑氏: コミュニケーションは格段に増えたと感じます。以前は部署ごとにデスクが島型に配置され、お誕生日席に上司が座る固定席でした。そのため、どこか「常に見られている」ような緊張感が常にあったんです。 それがフリーアドレスになったことで、今では役職や階層に関係なくフランクに会話ができる、とてもフラットな空気感になりました。
ーー 職場の雰囲気がガラリと変わったのですね。ペーパーレス化についてはいかがでしょうか?
岩﨑氏: デスクに書類が山積みになることがなくなり、オフィス全体に清潔感が生まれました。退社時にはデスクを綺麗にして書類をロッカーへ戻す運用になり、紙を持ち歩かない習慣が自然と身につきました。
毎日デスクを真っ新にして帰ることで、自分の“思考のOS”が一度リセットされるような感覚があります。物理的にスッキリするだけでなく、1日ごとに気持ちを切り替えられるので、現場としてもすごくありがたいですね。
ーー 書類をロッカーへ戻す運用に変わったことで、業務上の不便さや煩わしさはありませんか?
岩﨑氏: いえ、むしろ以前より快適になりました。ロッカーへの返却を徹底することで無駄な紙が減り、常に整理された状態をキープできています。 「毎日ロッカーに戻す」というルーティンが定着したことで仕事の切り替えもスムーズになり、とても良いリズムが生まれています。
8.【現場ならではの気づき】雑談が増えて関係性が深まった
ーー 他に現場ならではの気づきや変化はありますか?
岩﨑氏: 業務上の相談だけでなく、プライベートな会話が自然と増えたことですね。職場の空気感がフラットになったおかげで、誰もが話しやすい雰囲気が生まれました。 お互いの人柄を知るには「自己開示」が欠かせません。業務の話をきっかけに気兼ねないコミュニケーションが広がり、関係性がより深まっていると感じます。

ーー 自然な会話が増えているんですね。岩﨑さんは採用に携わっていたと伺いましたが、オフィスの変化が採用活動や定着率に与えた影響はありますか?
岩﨑氏: 部署間の交流が活性化し会社全体が前向きになったことで、間接的に「良い採用」へ繋がっている感覚はあります。ありがたいことに定着率も向上しました。オフィス環境そのものというよりは、リニューアルを通じて「働き方」が変わったことが、採用や定着に良い影響を与えているのだと思います。
9.【予想外の変化】フリーアドレスで省スペースに!来客スペースの新設
ーー オフィス改装前後で、予想外の変化はありましたか?
岩﨑氏: 予想外の出来事としては、フリーアドレスやそれに伴うペーパーレス化によってスペースに余白ができ、2階に本社の来客スペースを新設できたことです。 以前は、一般のお客様も本社宛のお客様もすべて1階の店舗(前橋石倉店)で対応していたため、店舗のショールームスタッフへの負担が大きかったんです。

ーー1階の店舗にすべて集中してしまっていたのですね。
岩﨑氏: ええ。固定席のままでは来客スペースを作る余裕すらありませんでした。今回フリーアドレス化したことでスペースを無駄なく活用できるようになり、店舗と本部の双方が抱えていた業務負荷を解消できました。フリーアドレスがこれほど省スペース化に貢献するとは予想外でしたね。
10.【今後の働き方】オープンな雰囲気の中で「自由闊達」な社風を加速させていく

ーー 新しいオフィスを通じて、今後はどのような働き方を実現していきたいですか?
岩﨑氏: もともと弊社には「自由闊達」な社風がありますが、今回のリニューアルによってその強みをさらに伸ばせると確信しています。ハード面を一新し、フリーアドレスという新たな環境を得たことで、当社らしいオープンな雰囲気がより一層加速するはずです。目指す組織像とオフィスの環境が見事に合致しているので、この空間を最大限に活かし、さらに風通しの良い組織を作っていきたいですね。